全国的かつ多大な獣害被害

 都市部に住んでいる人には実感が沸かないかも知れませんが、現在の日本全国の農山村の多くが、「特定の鳥獣による生活環境、農林水産業及び生態系に係る被害」=「獣害」に悩まされ続けています。近年では減少傾向ではあるものの、平成30年度の被害額としては約158億円と依然として高い水準であり、特にシカやイノシシ等の急速な増加によって、生態系や農林業等への被害が一層深刻な状況となっております。

 これらの被害は、柵や防獣ネットなどの設置や追い払い等の「守り」の対策のみでは限界があるため、生態系全体の保全を考慮した上での「攻め」の捕獲、積極的な個体群管理が不可欠となって来ています。

 この様な状況に対応するため、全国で様々な対策が実施される中、法律としても、
鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」が改正され、平成27年5月に
鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」となりました。
ここでの「管理」とは 「生物多様性の確保、生活環境の保全又は農林水産業の健全な発展を図る観点から、その生息数を適正な水準に減少させ、又はその生息地を適正な範囲に縮小させること」と定義されています。

参考リンク(環境省編):鳥獣の保護及び管理を図るための事業を実施するための基本的な指針

 

長野県における獣害

 獣害と一言で言ってもその被害をもたらす鳥獣と被害内容は様々ですが、長野県での「野生鳥獣による農林業被害」を見てみると、ニホンジカの被害が全体の33%と最も多く、次いでツキノワグマやニホンザルの被害割合も多いことが分かります。

参考リンク(長野県HP):野生鳥獣による農林業被害額の推移(平成16年度~平成30年度)(PDF:22KB)

ニホンジカ生息分布の変化

参考リンク(長野県HP):長野県第二種特定鳥獣管理計画(第4期ニホンジカ管理)

 最も被害の多いニホンジカによる農林業被害は、造林木の枝葉食害や樹幹部の剥皮害及び野菜や果樹の食害、水稲などの踏み荒しなどが、1975(昭和50)年から顕在化しており、その生息域も広がっています。その他の被害としても、南アルプス及び八ケ岳では、ニホンジカの高密度な生息による食圧・踏圧により、高山植物など自然植生の地域的消滅やササ群落の後退なども問題となっており、近年は分布拡大に伴い、北アルプスや中央アルプス等の県北西部での被害拡大も懸念されています。

 長野県の獣害による被害額は、総合的な捕獲や防除対策の効果により、11年連続で減少しているものの、平成30年度の被害額は約7億9千万円と依然として高い水準の経済的損失に加え、農林業の生産意欲を減退させる精神的な被害や人身被害も発生するなど、農山村での深刻な問題となっており、引き続き野生鳥獣による「人身被害の回避」や「農林業被害の軽減」を図ると共に、「人と野生鳥獣の緊張感あるすみ分けの実現」対策を講じていく必要があります。

高まる「猟師」への期待

 野生鳥獣による農林業の被害対策において、猟師による加害鳥獣の捕獲は重要かつ必要不可欠な対策の一つですが、猟師の高齢化、若年層の参入減少等により、近い将来捕獲者が不足し、加害鳥獣の捕獲が進まなくなることが懸念されています。

長野県の狩猟登録者数と60歳以上の割合

 そこで、狩猟経験の浅い人や、狩猟等鳥獣の捕獲に関心を持つ未経験者を対象として、野生鳥獣の適正な管理や捕獲に必要な知識や技術を身につけた捕獲従事者の確保を目的に「長野県ハンター養成学校(Hunting School Nagano)」を開校し、野生動物に負けない地域づくりに欠かせない人材を養成します。
 狩猟免許を所持していない方も、既に所持していながら技術に不安がある方も、本講座を受講することにより、鳥獣の狩猟・ 捕獲活動に従事する際に必要な知識、技術を身に付けることができるプログラムとなっています。講座修了後は、地域の鳥獣捕獲活動へ従事するとともに、狩猟の魅力を発信し、インフルエンサーとして新規狩猟者の発掘にも活躍いただくことを目標としています。

 豊かな自然を守り、野生鳥獣に負けない地域づくりのため、受講生に大いに期待をしております。

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