
今回のゲストは、福田 渓樹(けいじゅ)さんです。福田さんは、大学生でありながら、罠猟師兼ジビエ居酒屋『きくちゃん』の店主でもあります。 元々は今回のトーク企画はこの『きくちゃん』で美味しくジビエをいただきながら実施する予定だったのですが・・・。今回はオンライン飲み会形式で実施させていただくこととなりました。前回に続き、これから狩猟を始めたいと考えているまり子さん、そして食レポ担当として小幡さんを交えての座談会となります。 本日は宜しくお願いします。

福田です。宜しくおねがいします。

猪鹿庁の安田です。よろしくお願いします。 お互いに自己紹介お願いします。

初めまして、千曲市出身のシンガーソングライターまり子です。よろしくお願いいたします。

信州大学森林コース4年生の福田 渓樹(ふくだけいじゅ)と申します。大学1年生の時に狩猟免許を取得し、2年生の冬から狩猟デビューして、3年生のときにCSFで狩猟ができず、今年、有害捕獲を実施する予定です。

大学生でいながら、居酒屋を経営しているとの事ですが、そうなったきっかけを教えていただけますか?

狩猟は最初からやるつもりでした。縁があり、諏訪の猟友会にお世話になっていて、2年生になるタイミングで伊那市のキャンパスとなりました。もともと料理が好きで、狩猟も始めたこともあり、必然的にジビエにも興味を持ち始めて・・・。 伊那市に「ざんざ亭」というジビエ料理屋さんがあり、そこで週1で修行をさせてもらっていました。

そうしていたら、伊那市駅前の商店街を活性化するプロジェクトの一環で、現在の店舗を使ってみないかと声をかけていただいたのがきっかけです。

へー、すごい。それが「しんちゃん」という名前の居酒屋?

「きくちゃん」です。

あっ。すいません、間違えました(汗)

なんで「きくちゃん」という店名に?

ぼくのあだ名です。

家賃なども格安で借りてるんでしょうか?

そうですね。大変有り難いですね。

遅くなりました。乾杯しましょう。「きくちゃん」にいるみなさんも乾杯しましょう。

用意できました。

長野の狩猟とジビエの未来に乾杯〜!
狩猟をはじめたきっかけ

18歳から狩猟を始めたということですが、そのきっかけは?

生まれは新潟の妙高、幼少期に父がC.Wニコルさんの「アファンの森」を作る初期のメンバーでして。ニコルさん含め父の仕事仲間が狩猟をやっており、食卓にジビエ料理が並び、焚き火を囲んでいる時の記憶が鮮明に残っていました。
そのあと、長崎へ引っ越した後は、そのような機会が無くなりさみしく思っていたんですが、山での楽しい思い出があり、信州大学の森林コースを選びました。長野県の大学へ来て、ジビエ料理を食べたいという思いから、自分で狩猟を始めようと思いました。

食べたいということが一番なんですね。

そうです。釣りや素潜り、きのことり等、そういう事がとても好きなのもあります。

へー!楽しそう!

狩猟とは、獣を取るっていうイメージが大きいですが、山に入ると、きのこや山菜もあったりで、いろんな楽しみがありますよね。銃を持って、獣だけを獲りに行く以外にも実は沢山の楽しみがありますよね。

そういう山の楽しみ方も勉強したいです。

もう銃猟免許を取れる年齢ですね。取得予定はありますか?

空気銃を最初に持ちたいと思っているが、いずれは装薬銃も必要だと思っています。猟友会の知り合いからも(罠猟における)いろんな危険な経験談を聞いていて、そのためにも銃猟免許は必要だと思っています。装薬銃を持てば、巻狩り等の猟友会の活動にも参加したいです。

これまでのわな猟ではどんな獲物を捕獲しましたか?

2年生の時に狩猟デビューしたのだが、その時はイタチ等の小物は捕れて、鹿もそのときに1頭捕れました。3年生の時はCSFにより狩猟ができなくて。今年で3年目となるので、大物を取ってみたいと思っています。

それは今年たのしみですね。岐阜県もCSFで狩猟ができない時期がありましたが、今年は県民なら狩猟もできるようになるみたいです。

料理ができました。それに合わせるお酒とともに紹介したいと思います。
ジビエ料理、実食!

では早速、料理名とお酒、お願いします。

わー、楽しみ、いいな〜。

「鹿肉の漬け」です!
鹿の内もも(メス)を低温調理したもののスライスを、スパイスを入れたマリネ液につけたものです。上に乗っているのは、「ニセアカシア」という木の花のピクルスです。


おいしそう、今すぐ食べにいきたい!すごーい!!

合わせるお酒は、伊那市の地酒の「漸九郎」です。信濃錦という酒蔵のものになります。


日本酒を合わせるんだ。おいしそう。

おいしそう・・・。

トマトや青じそでさっぱりとしながらも味の濃い鹿肉に、フレッシュでドライながらしっかり米の味わいもある斬九郎が合います。すっきりしていて、料理に寄り添ってくれるお酒です。

食レポお願いします

鹿は背ロースより内もものほうがやわらかいというイメージがあります。

もう一つ、これにあわせる日本酒を紹介します。「こんな夜に」という伊那の地酒です。これは、ラベルにはシカの角が書いてあって、「鹿」というシリーズになります。酸味もちょっとあって、ジビエに合います。その他にも、「雷鳥」や「ヤマメ」という種類があります。

いいなー、ほんとに行きたい!

つづいて、2品目です!

お!

『夏野菜のキッシュ』です。鹿のレバーのソースを敷いています。


わー!おしゃれ!

おしゃれだなー!すいません、キッシュでどういう料理なんでしたっけ。

キッシュはタルト生地に、洋風の茶碗蒸しのようなものを入れ、焼き上げたものです。

おいしそう・・・。

今回は、ソースだけに鹿を使いましたが、キッシュの中に、シカ肉の燻製を入れる場合もあります。

すごいおしゃれ!

料理が想像と違ってました笑。もっと和風の居酒屋風メニューが出てくると思ったら、おしゃれな料理がどんどん出てきますね。お店の名前とのギャップがあって(笑)。

ジビエって、こんなに洋風料理になるんですね。想像していなかったです。

ジビエってフランス語だったりするので、どっちかというと洋風のほうがレパートリーが多いです。
これに合わせるお酒は、「南信州ビール IPA」という伊那の地ビールです。ドライで凝縮された夏野菜の味わいと、濃厚な鹿レバーソースが、IPAのどっしりとしたホップのコクと苦味がよく合います


一品目に日本酒を合わせ、その次の料理にビールを合わせるって流れが良いですね。

シカのレバーのソースってどんな味なんですか。

レバー特有のくさみを出さないために、何か工夫をされているんですか?

鹿の料理のときは、「火の通し方」に気を付けています。肉やレバーは火を通しすぎると変性してしまって、おいしくなくなるので、菌を無くしながらも、素材のおいしさを保つようにやっています。
実はもともとレバーが苦手だったんですが、苦手過ぎて調べてみたら、温度によって、レバー臭が出てしまう温度があることが分かり、調理方法を工夫すれば苦手な臭さが出ずに食べられる用になりました。

お〜、あえて苦手に立ち向かう。きくちゃん、やる男ですね。

母が僕のレバー嫌いを克服させるためにカレーにレバーを入れたりしたことがあったが、それでも自分は食べれなかったんですよ。

レバーカレーってあんまり聞かないですね。

どうしても僕に食べさせたくて作ったんだと思います。臭さの物質があって、レバーの臭さってのはアラキノン酸っていう物質ですね。それで苦手に感じる人もいるんですね。

なるほど〜。まり子さんはどんなジビエ料理を食べたことあります?

今まで食べたことあるジビエ料理は、鍋しかないです。イノシシです。

伝統的なシシ鍋ですね。

こんなにレパートリーがあるなんて知らなくて、ほんとにきくちゃんの料理食べたいです!

僕も最初は焼肉とかでしかジビエを食べてこなかったが、狩猟でとったものを食べるには、知識がないとおいしく食べれない事があって。最初は火を通しすぎていました。料理の仕方を知らなくて、鹿よりイノシシがおいしいと勝手に決めつけていました。本当のジビエ料理のおいしさを知りたくて、奮発して「ざんざ亭」へ食べに行ったら、鹿も料理の仕方でこんなにおいしく食べられるんだと知りました。

鹿よりイノシシの方がおいしいという人も大勢いますが、鹿も負けないくらいおいしい食べ方があると思っています。まり子さんは、まだまだジビエ料理を食べた経験が少なという事は、これから楽しみですね。

こんなに料理がいっぱいあるなんて知らなくて、そのことにびっくりしてます。きくちゃんに突撃したい!

「ざんざ亭」で食べたシカ肉の料理に衝撃を受けて、今は鹿肉がおいしいと思ってます。

次は、ウィスキーを合わせる料理です。

わ〜、楽しみ。

『鹿肉のカツ』です。揚げた後に切っていきます。


わー、断面がきれい。

結構分厚いんですね。どこの部位ですか。

内モモです。

オーブンで水分飛ばすともっとサクっとなるんです。タルタルソースで召し上がっていただきます。ふきみそのタルタルソースです。

あげる前に低温調理で火を通しています。

なるほど、そういうことか・・・。

衣が取れてしまわないように、オーブンを使うというやりかたもあります。

これに合わせるお酒はなんですか。

マルスウィスキーの「岩井」です。ブレンデッドなんですが、私はジャパニーズウィスキーの2千円代のもので一番おいしいと思っています。飲み方はハイボールがおいしいですよ。
ふきみそに合うんです。少し甘く香り豊かなふき味噌を加えたタルタルソースに、シェリーのニュアンスがしっかり感じられるマルス岩井がよくあいます。特に岩井はハイボールが美味しく、ソーダで割っても味の濃さ・香りは失われず、タルタルをかけた鹿カツによく合いました。


飲みたい・・・。今からAmazonで買います。(ポチっと。)

次の料理は、お店の外に出て作ります。イノシシ肉を炭火で焼きます。部位はランプ(お尻)です。


これはいつ頃とれたイノシシですか。脂がしっかりのってますね。

去年の冬です。まり子さんはイノシシの脂は味わったことありますか?

ないんです。

イノシシの脂は、とってもおいしいんですよ。

歯切れもよいですよね。

焼いただけですか?

ネギといっしょに低温調理してから、炭火で焼きました。

なるほど、手間をかけますね〜。

できました。『イノシシの炭火焼き』です。ソースは、和風です。脂がしっかりあります。ソースはしょうが、玉ねぎ、長ネギ、みょうが、山椒、ニンニクを使ってます。


おいしそう!!!

これまた盛り付けがおしゃれですね。

これに合わせるお酒は、今では買えないものになるんですが、マルスウィスキーのシングルモルト『駒ヶ岳』です。ダブルセラーズといって、鹿児島のセラーと長野のセラーそれぞれで同じ期間熟成させたウィスキーを合わせたもので。長野県は気温の日格差があり、熟成が早まるんです。鹿児島は気温変化は少ないが、甘い香りになりやすい。
炭火にスモーキーなウイスキーはよく合います。特にダブルセラーズはスモークと塩っぽさ、スパイス感のバランスがよく、薬味たっぷりのソースによく合います。

飲み方は?

ストレートかロックです。ウィスキーと同量の水と合わせると、ウィスキーの香りがさらに分かりやすくなります。

いいな〜。

料理は以上になります。

いや〜。予想以上に飯テロでしたね。現場に行けなかった事がこんなにもツラいとは・・・。
最後にお聴きしたいと思います。今後、福田さんは大学卒業し、就職されるというタイミングですが、狩猟とどのように関わっていきたいですか。

先輩猟師さんと同様、休日に狩猟を行うということを考えています。今は、アパートに住んでいるので、ガンロッカーを設置できないという理由で銃を持っていないんですが、就職してからは銃を持って活動したいと思っています。

まり子さんに説明しますと、銃を持つためには、銃を保管するガンロッカーを家に設置しなくてはいけない。ガンロッカーはロッカーごと盗まれたりしないように壁に埋め込んだり、ねじで固定する必要があり、賃貸住宅だとハードルが高いんです。また、アパートだと、大家さんや隣人の方が銃を持つことを良く思わない場合もあって、特に都会だと狩猟のために銃を持つことが難しい状況なんです。

なるほど、都会に住んでいる人は特に大変ですね。

福田さんはこれから銃の免許を取るんですね。

そうですね、今年の銃猟免許試験を受け、空気銃から始めたいと思っています。

大学生では、就職活動のネタとして狩猟免許を取得するって話を時々聞いたりもしますが、これだけジビエ料理の腕前を持つ福田さんにはぜひとも今後も続けてほしいですね。

そうですね、時間的なハードルもあるとは思うが、やっていきたいです。

狩猟免許取得から、最初の一頭、一羽をとるまでの期間ができるだけ短いというのがモチベーション継続にもつながると思うので、ハンティングスクール長野では、そういったサポートをしていきたいと思っています。
個人的にも「きくちゃん」に鹿や鳥のお肉を持って、料理食べに行きたいと思います。

ぜひぜひ、お待ちしております。お持ちいただいたお肉でおいしい料理つくります。

どれもおいしそうでした!行きたいです!
